(第七部)
「本当は今日は、早朝から汗を流してそれで帰ろうかと思っていたんですが、
いつ頃、お帰りになるのですか?」
「私の方は、これからメ−クさんがメ−クを開始しますので、そのメ−クを
終えて食事をして、この近辺で少し写真を撮って、そうですネ。十時頃にな
ると思います」
「それじゃ、私共も見送りをしてから、コ−トにいきますよ」
「そうですか。これから皆さん大変なんですよ、メ−クを開始し始めますの
で、戦争のような状態になります」
後のペンションの窓にも人影が感じられました。
「そろそろ、部屋にもどりましょうか?」
「そうしましょうか」
ペンションの入り口に入ると直ぐ女装者の一人が居ました。
「おはようございます」
「おはようございます」
「エェ〜、もしかしたら・・・」
「ああ。そうでしたネ。男性の時の顔知らないのでしたね」
「その通りです。ビックリしました?」
「もう、ほんとビックリしました。そんなに変わるんですね」
その人だけではありません。皆がそれぞれ初対面のようで、そうでない奇妙
な体験を一人一人するわけです。なかには素顔を見られるのを嫌ってメ−ク
しなければ出てこない人以外を除いて、全員が改めて挨拶をし直しているの
です。
もうあちらこちらで写真を撮ったり、話しに花が咲いています。楽しかった
思い出の一日をかみしめるように、笑い声が聞こえます。
あの声をかける前の雰囲気と今の賑やかさ、明るさは比べ物になりません。
昨日のテニスの話しを真剣にしていたのに、今日はもうそれどころではない
状態になっていました。今日帰るのを名残惜しむように、寸刻を惜しんで話
しをしているのです。
私はそれを遠巻きにして眺めていました。
そこに、ここのオ−ナ−がやってきました。
「楽しそうでしたね。普通はあまり夜遅くまではダメなんですが、楽しそう
だったんで」
「すみません、本当に盛り上がっていましたようでした。皆も体験した事の
ないことだったもんでついつい夜遅くなりまして申し訳けありません」
「いや、そうじゃなくってよかったと思っているんです」
「そうですか、ありがとうございました」
食事を終わって、もう一度皆が外に出てきました。快晴とまでは行きません
が、昨日の天気よりもかなり良くなって、時々晴れ間の見られます。
誰もが想像もしなかった。晴れ間です。心も・・・。
「皆で写真をとりましょうか?」
良く覚えていませんが、誰かの提案でそれは楽しそうな交流の輪のできた写
真が今も私の手の中にあります。
それから暫くして、そのペンションを後にする事になりました。
あの「どうですか、びっくりしたんじゃありませんか」の一言が今の賑やか
さをつくるきっかけとなったわけです。
本当はこんなに明るく、楽しそうな女装の人達を見つめて欲しいのです。
前の例は自滅自沈してしまった話し、今度は拍手喝采の話し、両方とも主体
は同じ女装者達です。
何もしていないのに、こうだろうか?ああだろうかと思われる女装の世界で
本当は、ああだろうもこうだろうもない直な女装者達を受け入れてくれる事
を私は望んでいます。
人種や民族の偏見や誤解といったものと同じように、女装者達もあらぬ疑い
をもって見られています。そうでないと言えば言うほど、その人種や民族と
同じようにそうでない事を疑い、ついには紛争をも起こしてしまう。
次ぎの例は想像もしなかった事態に遭遇した例です。
[例その56]
春の長閑なある日、それは楽しい春の旅行を企画したことからはじまります。
春といえば桜。その桜は本当に期間限定のうまく行けば見られる。企画会社
泣かせの花の一種と言われています。
大阪ではもうすでに終わった桜花も地方や山間部に行けばみられるのです。
春の気配を満喫して、とある湖にやって来ました。こじんまりとした湖には
さほどの観光客もいず、パンフレットで見るほどのものもありませんでした。
みんなが集団でバスから降りて、三々五々自分の好きなように歩いてその湖
の近くまで歩いて行きました。
例によって、写真を撮る人もいれば、黙々とその辺を歩いている人もいます。
私はその湖の岸に歩みより、その中を覗きこんで見ました。
どこの湖も同じだな〜。それにしてもこんな普通の環境にある女装者達って
本当は幸せなんだって思いました。岸のチャプリン・ポリョロンの寄せる波
音を静かに聞いていると、時間が三倍スロ−で消えて行きます。
写真撮りもやや落ち着いたので、湖の売店に近づいてみました。まあどこに
でもあるような普通の売店です。ひとあたり見渡しました。
売店の横にあるトイレに行って出てきますと、売店の横で一人の男が電話を
しています。今みたいに携帯電話などがない頃の話しです。
聞くともなしに耳に話しが入って来ました。
「おい!、今な、おもしろい集団が来ている。悪いけど急いでカメラ持って
来てくれるかな」
私はドキッとしました。私は女装も何もしていないので、まさか私がその集
団を連れてきているなんど想像をもしていない、全く眼中にはない。
「何でもいいから、早く持って来いっているんだ!」
とんでもないことになりそうな予感です。
私は元の所にとって返すと、すぐさま召集をかけました。
「あまり見るところもないので、帰ります」
皆も写真の良いところもあまりないようですので、その言葉を聞いて素直に
撤収にかかりました。
まだ写真を撮っている者、トイレに行く者。それぞれが普通の動きをしてい
るのにも関わらず、私の顔面はもう緊急事態を告げそうになっている。努め
て冷静にならなければ
「あまりなかったですね」
「そうですね」
話しが続かない。私は今、鸚鵡返しの言葉しか話せない。
「皆、乗っていますか?隣の人を確認してください」
「大丈夫です」
「それじゃあ、出発します」
私はホッとして、外を見ました。
外では例の男が売店の看板に寄かかるようにしているのが見えました。
残念でした、アカンベ〜をしたいくらいの気持ちでしたが、その心を殺して
更に平静を保ちました。
人間ってさもしい動物だとおもいました。我が身の「ざまぁ見ろ」の気持ち
も、おもしろいから写真を撮ろうと思う考えも五十歩百歩。自分ながらその
身を恥じました。
暫くして、そのバスの中でその事を皆に伝えましたがさほどの反応もありま
せんでした。丁度、写真週刊誌の先駆けの頃でしたので、それがどんな意味
を持つのか今では想像の域しかありませんが、まだそれほどの肖像権の確立
がなされていない頃ですので、それが取り上げれられていれば一つの社会問
題化したかもしれません。
この話しはいろいろな要素を持っています。まずは女装して公衆の面前に出
てはいるのですから女装である事はすでに、自明の理(あらかじめわかって
いること)ですから、写真はいくら撮っても構いませんし、現像して写真を
個人的に見せても構いません。
問題なにのはそれから先の事なのです。本人の承諾もなくその肖像権を他の
媒体に公開する事はできません。それが自由にできると考えている人が意外
と多いのです。写真を撮ったのは私だからと理由なのですが、写真はモノと
しての写真本体と肖像権と二つの顔を持っているのです。どちらも同じ人に
帰属しなければ、自由に公開する事が出来ないのです。
この湖の彼は写真をいくら撮っても、何の意味もならなかったでしょう。
お友達と一緒に撮った写真や、男性の時の写真、スタッフの写真は女装に関
する課題に関しては、本人の承諾をうれば別ですが、公開は禁止されている
と解釈した方が良いと思います。もし公開を前提とするならば、それをお伝
えするのは絶対に必要な事です。
デリケ−トな問題ですから、必ず本人の承諾をお願いいたします。
よく外出している際に、女装と知って他の一般の人が一緒に並んで撮ってと
頼まれたりする事などありますが、この場合などはほとんど善意でなされて
いる場合がほとんどですから、差し出がましいことではありますがほんの一
言、冗談っぽく公開しないことをお伝えするのは良いことだと思っています。
写真の所有権と肖像権の混同からくる被害を説明しなければならない事など、
写真を撮る人達は当然わかっていることなんですが、世の中いろいろな人が
います。問題化する前には手を打っておきましょう。
[例その57]
思いっきりガングロや金髪でまさにニュ−ファッションだったらいいのです
が、中にはとてもファッションから遠ざかった格好をしている人を見かけま
す。
ショ−トヘァ−に白の長袖ブラウス、タ−タンチェックのミニのスカ−トに
白のタイツに赤のハイヒ−ル。おまけに顔は真っ白。ついでにガニ股で街を
闊歩されるといささか、女装を理解しょうとしている人達もさすがに奇異な
感覚に落ち込んでしまいます。
よく自分一人で女装を始めて、自分だけでその世界を作ってしまうとそれで
完璧だと思い込んでしまうようです。
「あのネ、そんな格好で歩いたらいけませんヨ」
「えッ、なんでですか?」
「メ−クもおかしいし、よく注意して街の女の子がどんな服装をしているの
かよく観察してみてください」
「・・・・・・」
どうも本当にわかっていないようです。
セルフメ−クの恐さは自分で自分を変身させることが出来ることです。それ
が自分だけの世界だけで造り上げて、外に出ると異様な感じがする。自分に
はそれが見えない。自分は納得しているのだけれども、だれも言ってくれな
い。
よく目を閉じて十メ−トル程歩いてみると左傾向に傾く人。逆に右に傾く人
がいると同じように、その化粧傾向が別れます。黒い方向に行くのか?白い
方向に行くのかは本人の自然の傾向のようです。知らない内に真っ白に顔を
メ−クして歩けば誰もが注意をしてくれないので、余計に困ってしまうわけ
です。
メ−クさんに意見を聞くことは重要なことです。それだけでもかなり大切な
事になります。暫くル−ムに来ていなくてたまにセルフでメ−クしてきて、
素人目にもこれは目に余る時は、私の場合構わずに言い伝えます。
女装するって事は大変なことなんです。最初はそんなにも思っても見なかっ
た事でもこの登竜門は、鯉が龍にならんとするよりも難しい。
それが真っ白の化粧をして、悠然と街を闊歩するまでになる。ここの扉は鉛
の如く重く静まっている。一旦、その扉をたたくと堰を切ったようになだれ
込む。
[例その58]
「初めてなんですが・・・」
「そうですか。下着などお持ちですか?」
一目みて彼は何も持っていない。顔色は半病人のように蒼白。何かあったの
でしょうか?
「いいえ、何も持っていません」
「何も持っていなければ、セットコ−スがお得になっていますが・・・」
「それでお願いします」
かすかに男性にしては細い指先が震えている。
女装する勇気がやっと出てきての女装なんだなと思いながらも
「サイズをお測りいたしますので・・・」
私はメジャ−をもって胸囲を測りました。見かけは細身でしたが思ったより
も大きな92センチでした。私はA85サイズの下着セットを持ってきて
「これで大丈夫ですから・・・」
といいながらそれを袋にいれて、アンケ−トのお願いをいたしました。
それでは女装ル−ムへご案内いたします。
踏み込む未知の世界への戸は開かれました。
暫くして、女装は完成したようでした。アンケ−トもカウンタ−の方に記入
されて帰って来ました。
さらに暫くして、メ−クさんがル−ムから出てきて
「あの〜、もう一度メ−クしたいって言っているんですが?」
「何か、気に入らないことでもあったのでしょうか?」
「どうもそうではないらしいのですが、直接聞いてみます?」
「そうしましょうか」
女装ル−ムの扉を開いて中に首を突き込んで聞くことにしました。
「何か、あったのでしょうか?」
「いやぁ〜、何もありません。さっきのメ−クも満足してました」
彼はクレンジングクリ−ムを顔に付けている最中でした。
「どうして、なんですか?」
「こんどは、ド派手にやって欲しいのです」
横からメ−クさんが
「料金がどうなるか・・・」
「それは、再メ−クですからメ−ク代になります」
「いや、料金なんかどうでもいいのです」
「そうですか」
「とりあえずは、ド派手にして欲しいのです」
「承知いたしました」
暫くして、私も忘れていましたが、販売に一人のド派手なお姉さんが出てき
ました。
「どうですか?すごく変わったと思いませんか?」
「いやぁ〜、ビックリしました。声でわかりました」
私も自分で納得しました。あれだけ変われば充分でしょうと思うくらい変わ
っていたのです。
その人は写真も何も撮らずにその後すぐ再びメ−クを解いて、再びカウンタ
−に来て、
「ああぁ〜、スッキリしました。これでいいんです」
もう指先の微かな震えもありません。本当に堂々とした男性がそこにありま
した。迫力さえ感じられます。
「ありがとう」
と一言、言い残して大阪の街に男性として消えて行きました。
女装用品って、買いづらいのは確かです。でもここは専門店ですから、もう
堂々と買えばいいのですが、世の中そんなに絵に描いたようには上手く行き
ません。今度はそんな話しを少しだけ触れてみようと思います。
[例その59]
「あのォ〜、友達にたのまれたのですが?」
「なんでしょうか?」
「女装用品を買って来てと頼まれてきたのですが?どんなの揃えたらいいの
かわかりません」
「それは困りましたネ。サイズの問題がありますので本人さんが来られない
と合わない事などありますので・・・」
「いえ、サイズは大体私と同じくらいです」
「そうですか?」
ピンときても、これ以上は触れないのが思いやりです。
「どの程度揃えるのですか?」
「全部です」
「わかりました。それじゃ下着の方からやってみます。一応セットがありま
すので、そちらがお薦めなんですが・・・」
「これなんですか?無地ばっかり・・・」
「それぞれ、ばらばらでもいいのですが?」
「それの方がいいと思います。!?多分・・・」
「それじゃ、個別に考えてみます」
「寸法お測りいたします」
私はメジャ−を持って、彼の正面に立ちました。
「本当は、もう少し筋肉質なんですが、ちょっと恥ずかしい」
「・・・・」
無反応のまま採寸いたしました。
「A75ですので、この辺にあります。最初のお薦めは、パット入りのでき
ればシ−ムレスがいいとおもいますが・・・、好みの色がありますが?」
「それは聞いてきたのです。ピンクだって言ってました」
はいはい、わかっています。ピンクと言ってもいろいろあるんです。
「この辺りですから選んでいただけますか?」
暫くそこで選んでいましたが、シ−ムレスじゃないしかもサ−モン色のブラ
を持って来ました。
「それでよろしいんですネ」
とまあこんな具合に説明しながら話しを進めました。
「下着は最後、ショ−ツです。数もデザインも豊富にありますから、この中
から選んでください」
棚の一部分を指差して、私はその場から離れました。
これも、暫くして二枚をカウンタ−に持って来ました。
「次ぎは靴なんですが・・・、家の中だけで女装をするのだったらいらない
のですがどうします?」
「揃えます。寸法は同じなんで・・・」
「そうですか・・・」
一人で熱心に品定めをしていました。
「これにします」
と持ってきました。
「アウタ−はどんなのにしますか?」
アウタ−こそは個人差の出るものです。簡単なカットソ−からシックはもの
まで、この分野は代理では勤まりません。勿論セ−ラ−服などは個人差のな
いように作られていますので別ですが・・・。
「どれにしようかなぁ?」
ふと、漏れた言葉は自分の言葉でした。知らん顔、知らん顔・・・。
「いろいろ試着してみたらいいですよ」
「そうですか、それじゃ」
まずはスカ−トのところに行って、寸法とデザインをみていました。
「はいて見て良いですから・・・どうぞ」
彼は一つを持って試着室に入って行きました。
試着室でゴトゴト音はしましたが、その内に静かになってそのスカ−トを待
って出てきました。
「これは合いません」
「それではス−ツにしたらどうですか?上下のコ−デネ−トを心配しなくて
もいいのですから・・・」
「例えば、どんなのですか?」
私はサイズを中心に、そこの場所に連れて行って
「こんなんとか、これとか・・・」
具体的にお見せしました。ちょっとキツメだったら別のサイズ方までも着ら
れますので、そこまで説明を加えてその場を離れました。後は試着を待つば
かりです。
例の色のピンクは一体どうなったのでしょうか?
色・サイズ共にピッタリのを試着室に持ち込んでは見たものの、出てきてそ
れはダメだったようです。
「どうでした?だめでした?」
「ううん。サイズはいいんですが・・・」
元に在った場所に懸けながら、納得できなそうにそう答え返してきました。
「なんか、ピッタリこない」
「そうですか?それじゃサイズ違いのこちらの方はどうでしょうか?」
私は色は違うけれども、ワンランク下の豊富なサイズをお薦めいたしました。
「それじゃ、また試着してみます」
暫くして出てきました。
「スッキリしました。さっきのよりこれでいいです」
藤色のキレイなス−ツでした。一体ピンクはどうなったのでしょうか?
後、カツラを揃えましたが、もうその時分になれば全く自分が全面に出て、
話しをすすめていました。
ゴチャゴチャとした小物まで取り揃え、お買物は終わりました。
レジの前に立って、精算を始めました。
彼は軽い疲労にも似た顔をこちらに向けて、
「さっきの、やっぱりピンクにしょうかナ?」
まだ、悩んでいるようです。
「もう一度着てみたいのですが・・・」
「そうですか。かまいませんが・・・」
「すいません、試着してみます」
心残り無く試着してみてください。もうハッキリ自分のためとうたった方が
いいくらいです。それでもまだまだがんばっています。
「やっぱり、藤色のものでいいです」
試着から出て来て
「それではこれでレジします」
やっと終わったようです。約一時間くらいはかかったでしょうか?
彼は言い訳がましい事も一切せずに、精算を終わらせると急いで荷物をまと
めて
「ありがとう」
ピョコン頭を下げ一言いって、元気よくドァ−を開けて出ていってしまいし
た。これでいいんだと私も納得しているんです。
その一方に女装なれした初心者がたまに来る場合があります。
[例その60]
開口一番。
「女装したいんですけど、どんな事できるんですか?」
この質問には、いつも窮します。
心の中であなたは女装をしに来たのではありませんか?そのまま女装がで
きますと、鸚鵡返しに返したいところをこらえて
「専用スタジオがありますので写真をとったり、外出したりする事も出来ま
す」
と、そんな話しなどをしますが、案外それで納得するのです。
カウンタ−に寄かかって、初めてにしてはもう何十回も来た常連のような慣
れた会話を楽しんでいる人だってもいます。
でも話しを聞き込んでいくうちに少しづつ話しがづれてきます。世の中知っ
ているようで知らないことってあるでしょう。それと同じようで、さも専門
家かな?と思わせながらもそうじゃない。そういうパタ−ンです。
ベテランかと思えば、ほとんどごく最近にセルフで女装を始めたばかりで女
装が楽しくなり初めて来たところ、なんとなくハマッテしまった。
「サイズわかりますか?」
「ええわかります。B80です」
というパタ−ンです。実際、お測りしましょうか?といっても
「いいえいいです」
と断ってきます。
出来れば情報は多いに越したことはありません。
実際にメ−クを体験する段になって、いろいろな方と話しをするわけでそこ
で初めて、女装の深さを痛感することになったりします。
かと思えば、
[例その61]
これは例にはならないかとは思いますが、ツ−と入って来てツ−と出ていく
例です。
それが不思議なことに、皆が同じ行動をとるのです。まず入って見渡します、
それからカウンタ−を中心にしてグルッと回り込みます。それから自分の目
指す場所にまず行きます。それを確かめてそのまま、すぐに帰ってしまう場
合も結構あるのです。恥ずかしいのと見てはならなかった物を見てしまった
ということなのでしょうか?
それはもう玄関の戸をチラッと開けて帰る人だっているのですから、しかた
のないことなのでしょう。それでも勇気をだして戸を開けて中に入ることの
難しさはほとんどの人が、口を揃えて言う事なのです。それが次第々々に慣
れてきて、最後にはただいま帰りましたの感覚になってくるのですから、不
思議なものです。
どんなことでも、最初の扉は自分で開けなければ、この世界は開きません。
だれの手助けもありません。もうここまでくれば自分の気持ちに忠実にカウ
ンタ−に話し掛けてみてください。あなたの動揺している気持ちはたった一
人のものではないことを教えてくれるでしょう。
[例その62]
「実は、今までズッ〜と悩んでいたのです。女物の方が親しみもあるし、男
物って凄くいやで、異物感があるのです」
「そんな方、結構いらっしゃいますよ」
「子供の頃、なんでスカ−トをはいていけないのかわからなかった」
「少し変わった子供っていわれたでしょうネ」
「そう、言われました」
「中学校頃はそんな事は言わなくなりましたが、でも本心はそんなに思って
いました」
「なぜ言わなくなったのですか?」
「そりぁ、真実いえば皆に白眼視されるに決っている」
「それは小学校の頃と同じでしょ。社会的な分別というか、知恵がついたの
でしょうね」
「それでも女物を着てみたかったのですが、柔道部なんか入って余計男くさ
い世界に浸っていました」
「反動なんでしょうか?」
「柔道部の主将なんかも体験しました。部活の文化祭に女装をやろうと言う
事になって、密かに狙っていた女の子に渡りをつけてセ−ラ−服を借り出し
ました」
「セ−ラ−服ファンは多いですから・・・」
「私の場合は、セ−ラ−服は好きじゃ〜ありません。普通の洋服です」
「どうでした?」
「よかったですよ」
「それがなんで、今日こんな所に来たのですか?」
「ずぅ〜と悩んでいたのですが、注意してみていると結構そういう人は多い
らしい、インタ−ネットの女装の話しでも同じ境遇と心境を持ち合わせてい
ると確信を持ってきたからです」
「なるほど、その通りなんですが・・・」
「それでも、まだ勇気はでませんでした」
「何が動機なんですか?」
「一つは経済的なゆとり、もう一つは時間です」
「今日は両方ともバッチリなんですか?」
「いや、両方ともダメですが、いつかはヤルでしょうから、そのイツは今っ
ていうわけです」
「それで、どうでした?」
「簡単に言って、よかった。ホッとしました」
「よかったですね」
「本格的なメ−クも、いろいろもよかったと思っています、ただ皆に乗りき
れなくて、何をしていいのかわからない」
「そりゃ、もっともの事です。ここにいる皆でも最初は同じですヨ」
「最初はネ・・・」
「そりゃ、今の態度みるととてもそんな感じはしませんが・・」
「なんか、切羽つまった感じできたものですから・・・」
「そうなんですよ。一つはそのパタ−ン、もう一つは遊び感覚で来る人がい
ること、なんですネ」
「時間もお金もなかったし・・・」
「最初はお金がかかりますネ。どうしても揃えなければならないものがあり
ますから、どんな趣味でも同じです」
「そんなに考えればいいのでしょうが、なんか割切れない」
「その内にいろいろな感覚が変わってしまいすよ」
「でも、今こうしていると、少しづつ落ち着いてきているのがわかります」
「女性の見る目が変わります。目の動き方が全然変ってしまいます」
「今まででも、あのヘァ−とか、あの洋服とか見てましたけど・・・」
「あなたの場合はあまり変わらないか?な。目の動きを線でたどると、普通
の男性は上下、女装者は左右に動くのです。これは女性と同じです」
「私は左右ですが、上下にも動きます」
「そうなんですね、まず自分の興味のあるところからスタ−トします。例え
ばヘァ−でとすれば頭からそのヘァ−を左右するわけです。その次ぎ顔とか
メ−クとかに動くわけです。それは上下とはいいません」
「それじゃ、左右です」
「男性はHな視線。女性はファッションを中心とした視線ということになり
ますか」
「洋服やその他の小物が欲しくなったり、しています」
「女性の感覚に近くなればなるほど、その求心力が強くなります」
「今、女装の体験をしてしまって、わかるような気がしています、以前から
そうであったより以上に、強くなっています」
「その内にあんな格好してみたいとか、あれどこで売っているんだろうかと
か、あの色いいなとか、そんなのばっかり気になるようになります」
「知らない内に女性週刊誌をしっかり見ていたりして」
「あります。ありますそんなこと・・・」
「実際、我慢できなくなったら、買うしかしょうがないのでしょうか?」
「まさか、盗ってくるわけにはいきませんから、それはしょうがないのでし
ょうね」
「特にこだわりのあるスタイルだったりするとこまりますね」
「女性もそうなんですが、食べるのを削っても買ったりしますしね」
「そうならないように注意します」
「あなたのような、いわば確信犯に近い女装をしている人は、無理して女装
をやめようとは思わない事が必要です。無理をすればするほど逆に作用して
きます。女装と上手にお付き合いをする事をお薦めいたします」
「どうすればいいのでしょうか?」
「経済的な面、社会的な面、時間的な面、その他諸々の状況で女装出来ない
状態にある時は、いつでも女装をする事ができると逆に考えることです。ど
うしてもそれでも切れそうな時は、もうしょうがありません。します。が、
それでもそれを原動力に利用します」
「出来ないと思うより、今度何時いつにすると決める。決めればその日を目
指してがんばってみる」
「わかりました、やってみましょう」
[例その63]
最初は女装とは違う切り口から女装にの入り口に入る人も数多くいます。街
角で見かけた女装に何らかの嫌悪感を持っていながら、他の入り口から入り
ながら、まさにその女装の中心部にいる人もいます。
「いつかは辞めるでしょうが、今は楽しんでいます」
「なかなか大変なんでしょう?」
「できれば、今日化粧したくないと思うことだってあります。でも仕事です
からしますけど・・・」
「仕事ってそういう側面ありますよ。こんなに女物に囲まれて朝から晩まで
格闘していると、感覚が鈍ってしまいます」
「本当は女装は好きで始めたのじゃありません。どんなになるかな〜程度で
お楽しみで来たのですが・・・」
「それで、初めて女装してみてどうでした?」
「思っていたより、まずかった」
「それじゃ、凄く期待して来たわけでしたのですね」
「そういうわけじゃないのですが、思っていたよりかわいくなかった」
「普通はそこで止める人が多いのですが・・・」
「念のため、もう一度来てみました、が、少しはよくなったものの、まだダ
メ」
「それでも止めなかった?」
「そうです」
「もう一回、念のため?」
「私の理想が高すぎたって思いました」
「納得できないってやつですね」
「ところが三度目に来た時に、これだって思いました」
「可愛かったわけですね」
「よくよく見ると、妹に似ている」
「まあ、見なれた顔で安心したのでしょうか、それにしても妹さん可愛い顔
をしているのですね」
「そんなことありませんが、たしかに安心したのはそうかもしれません」
「よくがんばりましたネ」
「本人はあまりそんな感じはしていません、定期券という便利な制度がある
のを聞いて、それから一気に壊れてしまいました」
「罪作りは定期券っていうわけですか?」
「まあ、そうでしょうか?それからは毎週毎週楽しみで、通って来ました」
「それからはもっとかわいくなった?」
「そうです、ドンドン変わっていきました」
「問題点はありませんでしたか?」
「何か時に、メ−クさん急病でメ−クできない時ありまして、スゴスゴと帰
った事があるのです」
「すみません。生身の人間ですので予定通りは行かないこともあります」
「それで、こりゃメ−クもやらなきゃならないって、気がついたのです。早
速メ−クのセットを買ってしてみました」
「どうでした?」
「いや〜、最初は家でやってみました。一人暮しなんで気軽にいつもメ−ク
さんがやっているメ−クなんで、サッサッてできるかと思ったんですが、全
然出来なかった」
「惨憺たるものだったわけですネ」
「その通りです、最初のファンデ−ションから引っかかりました」
「それは重症かもしれない」
「実際はよくみていなかったのですね」
「よく、見ていた筈なんですが、みていなかったんですね」
「簡単にできればそれに越したことはないのですが、その日の気分でいろい
ろ変えられるメ−クって難しいんじゃありません?」
「そうです。気が付きませんでした。それでそれから猛特訓しました」
「セルフメ−クの楽しさを発見したわけですね」
「いや、いやそんなもんじゃありません、とりあえずは普通に出来るように
いろいろ体験しました。メ−クさんにいろいろ教えていただきました」
「なんか発見はありませんでしたか?」
「ありました、ありました。メ−クの基本は土台からということが理解でき
ました。表向きの塗るメ−クの前に素顔のままの土台をキレイにしておく事
がメ−クのノリを良くする基本って言う事がわかりました」
「それでメ−クができるようになったのですね」
「ま、一応は・・・」
「外出はいつからですか」
「セルフメ−クして直ぐ出ました」
「心配じゃ、ありませんでしたか?」
「心配でした。ただメ−クさんが大丈夫だっていうから・・・」
「困ったことなどありませんか?」
「あります。だんだんエスカレ−トして、ホテルに泊まってみました。とこ
ろが朝起きて、化粧を始めて意外と赤みの強い照明に目がなれて、本当の色
がわからない」
「それでもなんとかしたのですね」
「多分ですが、めちゃめちゃしてホテルをでまして、ここに飛込んできまし
たホッとしました。よくホテルに泊まるって言って自分の靴やクレンジング
やリム−バ−などを忘れる話しなどを聞いていたので、それはよかったので
すが・・・」
「意外な所に伏兵があったのですね」
「一度体験すると、次ぎの時はああしよう、こうしようと考えます、それも
楽しい思い出となります」
「今はどうなんですか?」
「今は、化粧は仕事の一部ですからためらいも無くしますが、本当の事言っ
て前にもいいましたがしたくない事もあります」
「仕事だからなんでしょうか?」
「本当はもっと最初頃に受けた感動などを大切にしなければ、いけないので
しょうが・・・」
「仕事にした理由はなんですか?」
「それを聞かれるとマズイんですが・・・、普通の会社にいても何か窮屈で
何か合っていない。自分の適職って何かわからないって悩んでいました」
「毎日がんばっていたように思えるのですが、勿論どんな仕事か知りません
が・・・」
「何時も人の後ろを歩いているような気がしていたのです」
「そんなには思えませんでしたが・・・」
「やるからには、花形になりたいですよネ」
「この世界ではどうですか」
「最初は思いきって入りました。どうせ入るのならトップになりたいと思っ
ていました。でも今は前と同じです。上には上があるものです」
「今は人の後ろを歩いているように思われませんが・・・」
「ああ、それはないです。でももうこれが限界かなって思っています」
「何か心境の変化があったのですか?」
「心境の変化?そうですね。今、男の人と一緒に暮らしています」
「えッ、そうなんですか?」
まぁ、人それぞれが好きキライあるのと同じ、ここのところはあまり深くは
聞きたくありません。基本的には人間を好きになるとか嫌いになるとかは男
女にかかわらず、波長が合う、馬が合うとかいいますから何ら拒否する理由
はありませんが、これは私の感覚ですがやはり女性がいいと思っています。
彼は声を潜めるようにそういいました。何か罪悪感があるかのようにしかも
私に耳打ちするように、静かにサラリと言ってのけたのがとても印象的でし
た。
話がつまってしまいましたが、少なくてもNOの意見は持っていません。それ
を伝えようとはおもいましたが、話の手立てを持っていません。
私は早々に話しを切り上げました。
そう言えば、昔、男性と暮らしていてバレずに同棲している話しを聞いた事
がありますが、どうしていたのでしょうね。
[例その64]
昔はそれほどの選択眼がなかったので、女性であるのかそうでないのかを判
断できないことがありました。
その人は声も女性、姿形も女性どこからみても女性としか見えませんでした。
明かに女性だと思っていたのですが、ところが女装していたのです。
「本当の声はこんな声です」
と言って男性の声をだしてきました。そんな事その当時は初めてのことでし
たので、本当に面食らいました。
心の中は本当に唖然としてしまったのです。世の中には不思議な事もあるも
のだと思いました。あんなに可愛い女性が男だなんて考えても考えられませ
ん。でも事実です。
堂々と女性を張っていたからわからなかったのかも知れません。よく、女性
を騙って?それらしくしても看破してしまうのは、心の底に少しのわだかま
りが、生じさせてしまうのかもしれません。
なんとなくオドオドした雰囲気は、長いこと女装と対峙して見なれてしまっ
た見識眼が、そうさせるのでしょう。
一般の人の見る目線の低さは、女装の世界ではありがたい事です。説明しな
ければわからない人がほとんどです。自信を持って女性を騙っての行動は、
それをわからなくしてしまいます。
本当の声がなければわからなかった程の女性はその後どのような、人生をと
っているのでしょうか。そのまま女性をやり通しているのでしょうか。
女装といっても、これは女装かどうかあなたの判断に任せますという境界線
上にある事例もあります。それではこれからはその事例にふれてみようと思
います。まずは女装に一番近い例から・・・
[例その66]
いきなりカウンタ−に近づいてきた人を見て、ドキッとしました。頭は少し
髪の毛が少なくなり始めた男性が、ロングのスカ−トをはいているではあり
ませんか?しかも靴はそのまま、男性靴。要は男のままロングのギャザ−ス
カ−トをはいているわけです。上はジャケット。チョット見には抵抗がない
ものの、改めて見るとドキッとするわけです。
「あの〜ッ、プリ−ツスカ−トが欲しいのですが・・・」
「あの辺りにあると思うのですが、どうしたんですか?」
「本当はプリ−ツスカ−トが欲しいんですが、これしかないんではいている
わけなんです」
「そうじゃなくって化粧とか、カツラとかそんなものはいらないのですか?」
「いらんのです。これでいいんです」
いいといわれれば確かにその通りです。私も無理押しするつもりは全くあり
ませんし、なんでもありのこの世です。
「それじゃ、これで納得しているんですネ」
「そうです。男性がスカ−トはいちゃいけないなんて事はだれも決めてはい
ませんし、私ははきたいんです」
「そりゃそうですが、みんなおかしいっていいませんか?」
「おかしいっていいますよ。でも私は譲るつもりはありません」
「今は暗いですから、ここには何で来られたのですか?」
「車です。今下に置いています。そのままタタタタって上がってきたのです」
「だれかに遭いませんでした。」
「いや遭いません」
「昼間はどうしているのですか?」
「仕事中はこんな格好はできませんのでズボンはいてますが、裏に入れば直
ぐスカ−トです。パッとはけるのがいいですね」
「下着はどうしているんですか?」
「普通のです」
「いや男性用か、女性用かなんですが?」
「男性用です」
「化粧なんかはしませんか?」
「全くしません。興味もありません」
「スカ−トだけなんですか?」
「全くのスカ−トだけです。できればプリ−ツスカ−ト。さらにできれば目
の細かいプリ−ツスカ−トです」
「わかりました。大体の想像はつきました。ダンスなんかで使うスカ−トみ
たいなものですね」
「そうです。そうです」
「しかも、ウエストがゴムでフリ−のもの」
「その通りです」
「あの、辺りですが・・・」
暫くその指差した辺りを探していました。
「確かにありましたが、希望の色がありません。探しているのは濃い紺色で
す、あったら入れていて下さい」
「わかりました。それで昼間外に行かれることってあるのですか?」
私の話しの興味はまだまだつきません。
「行くこと?。もちろんあります。繁華街にもこのまま行きます」
「道理で少しも抵抗がなかったわけです。何かはきなれているっていう感じ
がしました」
「他の人はおかしいっていいますが、言いたい人には言わせておいていいと
思います。自分で納得して自分のお金で自分がしているのに、他の人がとや
かくいう筋合いとちがう」
「なんか、女装の考えと同じですね」
「そうなんですか?私はの女装というのは違うと思っているんですが・・」
「いや、女装の考え方と一緒ということなんですが・・・」
「わかりました」
「それで、どうしてスカ−トがいいのですか?」
「ウエストの辺りと下がス−ス−する、この感覚がいいんです。他に表現の
しようがないいんですが・・・」
「わかるような。わからないことなんですね」
「男性物ではありませんな。着物とはちょっと違う感覚なんです」
「結局はよくわかりませんが、欲しいっていわれれば揃えます」
とまぁ、こんな話しをしました。
本当言ってこれは女装なのでしょうか?
男性が街をスカ−トで闊歩すると言えば、奇異な感覚がありますが、侍が髷
を付け袴をはいて歩いていると思えば、奇異どころか立派な男性。ただ時代
が違うだけです。
私はこのパタ−ンは女装とは違うと思いますが、どう思います?
店に来られる方でたまにですが、同伴で来られる方がいます。この次ぎの例
は男性同士のパタ−ンです。このパタ−ンもいろいろありまして、なんか不
思議な一種独特な雰囲気を持っています。
[例その67]
まずはほとんど会話がないパタ−ンです。普通は買物と言えば楽しい会話が
あってしかるべきなのでしょうが、それがほとんどないのです。しかもあま
り楽しそうにないのです。
自分の目的がハッキリしていて、迷いもためらいもありません。目的の品物
の前に行って、まさにヒソヒソ話しで会話しています。ほとんどこちらには
その内容は聞こえて来ません。
決ればその会話もなくなり、それをカウンタ−に持ってきて精算を始めます。
そして、ふたりとも黙って立ち去ります。決って女装は一人分です。
[例その68]
次ぎの例は相手側が女性の場合です。
全部とは言いませんが、大抵は女性がリ−ド役を受け持ちます。品物選びか
らサイズの選定・柄や縫製まで細かく見ます。ご夫婦の場合もあれば、まだ
恋人の関係を想像させる人までさまざまです。
「ずいぶん、あるんや〜ネェ。こんなにあると思わんやった」
意外と明るい感じのする彼女はそう話しかけてきました。
「そうなんですヨ。女性のモノはなんでもあります」
「ほんとやねェ。結構明るい感じのする店ですねェ」
「何か、お探しですか?」
「いや、なんていうものはないのですが・・・。ただ、女装用っていうもの
ですから、一応は見ておきたいので一緒に来たんです」
本当はそれ以上にもっと聞いてみたい事は山ほどあるのですが、そんなにシ
ゲシゲと質問するわけにもいきません。実際のところは積極的に評価してい
るのかどうかが焦点にはなるのですが・・・。
初対面の悲しさといいますか、言葉はそれで終わります。
でも、このパタ−ンも必ずと言っていいぐらいに、女性がリ−ド役になりま
す。
男性曰く「これ欲しいんです」
「良し。許可する!」
って感じになります。まぁ平和なカップルのイメ−ジが強く出ます。夫婦や
恋人は強い男性の存在よりも、かあちゃんや彼女の方が強い方が波風が少な
いように思います。
どこでもそうでしょうけれど・・・・。
財布も必ず女性の財布から開かれ、お支払いしていただきます。
ここのに来る女性はかなりの数、理解を示してはくれていますが、半分はし
ょうがなくという女性と面白半分の女性という二つの影がここに来てもあら
われます。
[例その69]
面白半分は女性が明るく、しょうがなくは暗くなります。同伴する男性の女
装と彼女のかかわりの深さが出てしまうのです。
それに、リ−ド役の女性の気丈さは今までとは違う女性の社会参加の一面を
見るような気がします。私に逆の立場でそれを考えるとその勇気はありませ
ん。それだけ社会が開けてきたと言う証明にもなるのでしょうか。
私はこの分野に女性が参画することは良いことだと思っていますので、高く
評価していますが、だろうやかもしれないと想像たくましくして自沈してし
まう女性に一度、一緒に来てみたらと常々思っています。
中には部屋の中に入ってみたいと言ってくる女性がいます。以前にも書きま
した通り、男女を問わず女装をしなければ入室できません。男性のままで入
れるのは唯一、私だけなのですが、女性の場合は困りました。
頭の中の整理がついていなかったのです。
そうなんですね。問題は女装をするとかしないとかではなく、女装者を理解
してくれているかどうかです。
その切り口が少し違っても、金太郎飴の如くその輪郭がハッキリすればいい
ことなんです。
以来、女性に関して言えば必ず、話しを聞いてからにしています。
簡単にただ面白そうは完全にダメです。
男性に関しては見学はお断りしています。女装者は見世物ではありません。
ポリシ−です。
(お疲れさまでした。パ−ティはたのしかったですか?
突如として、喚起させられた一瞬に声を飲み飲んでしまいました。この気丈
で強さを誇る私が予期もせぬお客さまからの感謝状にうろたえました。
想い起こせば20年・・。
あの短い声の詰まった少しの間に、何度となく襲ってきた危機を思い起こし
ました。もう嫌だと思ったことも何度となくありました。
人間の汚さや、経済危機もありました。
とめどもなく押し寄せる波のように、声が止まりました。
大人っていやだね。心のなすがままに声をだして泣いた方がいいのにね。
持ち直さん持ち直さんとして終には、誤魔化してしまう。
ここでは直に感謝とこの心血が本当に沸いていることを伝えることができま
す。
ありがとうございました。)
[例その70]
今回は少し変わったパタ−ンの女装を紹介してみましょう。どんな事かとい
いますと、女装とは言えない変則な格好で外に出ようとする人がいる、と言
う事です。
「もしもし、どうしたのですか?」
「いや、これで帰りたいのですが・・・」
「カツラも付けないでですか?」
「おかしいですか?」
「おかしいとおもいますが・・・・」
「そうですかね〜」
「本人さんが納得しているのじゃ〜しかたありませんが・・・」
「私はいいんです。車も直ぐ近くにありますし、帰ったら直ぐメ−ク落とし
ますから、このまま帰ります」
と言って出て行きました。
本人はちょっとボ−イッシュな女装という感覚なんでしょうが、とてもそん
な状態じゃないのです。
男が女のメ−クをして、堂々と道路を歩いている姿を想像してみてください。
そんな状態なんです。
途中の階段(確かに人通りは少ないのは少ないのですが)もし人が出合った
らドキッとするでしょう、私はします。あまり変な格好は好ましくありませ
ん。それが流行の先端を行くものであったら別に問題はないのですが、なん
でもありの世の中ですから、本当は見ていても見なかったことにしてくれる
のでしょうが・・・・。
問題はこのメ−クは主観的にしてはいけないということです。いつも見られ
ている事を意識する事はメ−クにはとても大切なことなのです。
メ−クを自分一人で篭ってしている人のメ−クと、皆でワイワイ言いながら
しているメ−クに差がかなりつくのは自然なことなのでしょう。
[例その71]
今度の例は化粧もせず、ただ試着室でショ−ツだけをはき替えて出て行く方
や、ブラジャ−だけを付けていく方がいます。
厳密に言えば女装ではないのですが、気分だけ女装なのでしょうか?
「すみません。これ直ぐ付けていきたいのですが・・・」
「ブラジャ−ですか?」
「そのまま、下札なんか全部取っていただいて、あそこの試着室で付けてい
きたいのですが、いいですか?」
「そりゃ、いいですけれど、外から判りますよ」
「かまわないんです」
「それなら、いいんですけれど。お買い上げになった品物ですから・・・」
「それじゃ、試着室お借りします」
試着室から出てきたかれは、ちょっと膨らんだ胸を隠すようにス−ツの上着
を着て出てきた。黙ってはいたけれど、やはりわかる。
「それじゃ〜、どうも・・・」
黒の鞄を待って、一人のビジネスマンが元気良く出て行った。
あれでよかったのかなぁ?と考え込んでしまう。
女装も次第にエスカレ−トする。最初は恥ずかしそうにしている女装も、次
第次第にその感動がなくなってくる。ブラジャ−なんて手で触ることだって
なかったものが、いつも触っていることで麻痺してしまう。
慣れくるにつれて、感動もなくなればブラジャ−が存在していることだって
忘れてしまう。最後にはワイシャツの下に薄く見えるブラジャ−だって異物
感なくやってしまう。主観として見えなくなる。恐い話しなのです。
みんなで渡れば恐くないって本当にあるのですね。これはある時のバスツァ
−の一場面です。
[例その72]
「ギャ〜。これは多い。ダメダメ、次々」
私は次ぎの土産やさんにバスを進めました。
いや待てよ。何も恐がることはない。私達は何も悪いことをしているわけじ
ゃないし、逃げる必要はない。正々堂々と正面から入る、こうすればみんな
も次第に気慣れてくる。ここは勝負だ。
「すみません。さっきのお土産やさんにバックしてくれますか?」
「良いですけれど・・・」
「みんなはどう思いますか?」
「・・・・・・」
「それじゃ。さっきの所でお土産を買ってください。ついでにトイレ休憩で
す」
みんなの顔も少しこわばっています。確か大型の観光バスが三台・その他の
乗用車がもうその辺りに沢山いたのを確認していたのですから、それは無理
ありません。
車はその大きな土産物屋さんの正面にさしかかりました。
「どこに止めましょうか?」
即座に判断しました。
「正面の真中にお願いします」
バスは無表情にその未知のエリアに軟着陸いたしました。
「さ、降りてください。買物をしたくない人はこのままここにいて結構です、
トイレの休憩もします。女性用を利用してください。それでは・・・」
一瞬の静けさが、最初の一歩で幕が切り落とされるを待っています。
「行ってきます」
一人の人が立ち上がりました。
「行ってらっしゃい〜」
明るくハッキリとした声で答えました。
「私も・・・」
次ぎに連なりました。ああこれで安心だ・・・。
少しの躊躇もなく勇気をだしてくれた人に感謝しました。
そうです。あなた達がこの新しい女装の世界を広げてくれるのです。私はそ
の後姿に手を合わせました。
最初に5人くらいが降りて行きました。
その中心部に近づくと、意外と無関心なのです。
「あれ〜。気がついていないのかな?」
と思いました。でもよくよく見るとそうではないようです。知らんふりをし
ているのです。大丈夫・・・・。と思った時、
「私も行きます」
これを見ていた残り半分が出るというのです。
「どうぞ・・・」
これでかなりの集団になります。事態はこれでどのように変わるのでしょう
か?
最初の集団はさほどの感心もないかの如くふるまっていた一般人も、あまり
の女装者の多さに、ちょっと気後れしたのか、買物の手を止めています。
ただ、呆然と立ちすくんでいるのです。
さらに追い討ちをかけるように、
「私も出て行きます・・・」
と最後まで残っていた、バスの中全員がその大集団の中に雪崩れこんで行き
ました。そのバスの中には私一人取り残されて、その行動を一部始終、本当
に客観的に観察できたのです。
女装している人達は本当の意味で必死に、お土産を探しています。可愛いい
女の娘好みする小物から、晩酌に使えそうなちょっとしたものまで、品選び
しています。
急いでトイレに行くものから、その辺にもう女装女装のオンパレ−ドなので
す。それでも全体からみれば10人に1人くらいなんですが、目立つのはしょ
うがありません。
心理的には非常に面白い現象がみられます。対集団の心理と言いましょうか、
バランスがどこで崩れるか、その状況がそのまま目の前で繰り広げられてい
ます。
今まで買物をしていた人達は、もう買物どころじゃありません。四人三人一
人として、立ちすくんで固まっています。ごくわずかな人達が前と同じよう
に物色しているのです。
無視を決め込んでも、無視できなかったその人達を尻目に、こちら側の陣は
もう傍若無人といいますか、ほとんどいつもと同じ買物に専念しています。
こちらのバスの前ガラスからの眺めは、一幅の絵巻物を見ているようでした。
彼らに話しかける人はいませんでしたし、売店の人も普通を取り繕うのに必
死でした。
「ただいま」
帰ってきました。
帰ってきた顔は出ていった顔よりはるかに明るい笑顔でした。
今ではその最初に出ようと言った人が、流れに重い石を持ち出した流れとは、
別に本流となって流れ落ちようとしています。
「どうでした・・・?」
「いや〜、楽しかった」
「何、買ったん?」
「漬物をかったんやけど、美味しそうだったんで、お土産・・・」
「みんな、どうだったの」
「あまり、気にしていないようやった」
「そんなことないよ。気にはしていての誰もいえなかった」
「言えるわけないでしょ!」
「自分だってそう思う。できれば触れないでって思うかな?」
外の光景はまだ、絵巻が続いています。私は話し半分で外ばっかりみていま
した。本当に呆然とした顔を第三者として見るのは、不思議な魔力さえ感じ
ます。客観的に見れる私と主観的な私が混在して、そして納得するのです。
「あぁ〜、私は神には成れない」一般人だと思うのです。
ザワザワとした空気の中で何事もなかったように時間だけが過ぎ去っていき
ます。
やがて、みんなが三々五々と帰ってきました。あらゆる占領品を勝ち誇るよ
うに持って帰ってきました。
「それでは、揃いましたか。出発します」
「は〜ィ」
車窓から見る目は私、車外から見る目は大勢。
「みんな、ちょっと外見て!みんな見てるよ!」
「あッ。本当だ。バイバィ〜」
ほとんどお土産の買物していた人達の視線がここのバスに集中しています。
店の中のお客さんは、マバラになってこの明るい日の光の下に出てその始終
を見ようとしています。
バスは突き込んだそのまま姿勢から、少しバックして方向転換をして、体制
を整えあたかも飛行機の離陸寸前を思わせるように旅立を待っています。
「さいなら〜」
後の方は残念ながら車窓の後になるのでよく見えませんでしたが、みんなも
元気でしたし、手を振って本当に楽しそうでした。
駐車場に入る時に雰囲気と出るときの雰囲気が全く違うのです。
「ああ、よかった」
私は安著の心地良ささえ感じました。
あの突入する瞬間の厳しい判断は正しかったとその時思いました。
[例その73]
「ほんなら、一度水着の撮影会なんどしてみたい」
「えッ。女装の水着????」
「やってやれん事などないでしょう。私も海パン持っていきますから・・・」
「私達は写真を撮ってもらいたいでけです」
「そうですか?まぁどっちでもいいですけど・・・」
「ずいぶん、なげやりですね」
「いや〜、あんまり見たくないぃ〜んで・・・」
明るいピ−カンの太陽の下、目の前には日本海の白砂青松がある。トロリと
した時間とほんのわずかの波のサワめきが心地良い。
「そうですね。一度やってみましょうか」
こんな状況で引く手はない。冗談の対応はこのくらいにして、本格的に企画
してみよう。
頭の中ではいろいろな案が出はじめた。
まずは場所、静かな場所でプライベ−トビ−チのような海岸。
はたはた改めて考えるとなかなか無いものです。日本中海岸だらけですがそ
の目的にあった海岸となるとそうたやすくは考え浮かびません。
それに、そのビ−チ、車にすぐ退避できる事とか、あまりたくさんの人がそ
の浜にはいない事とかもう考えて列挙すれば暇がありません。
それにシ−ズン中はどこの海岸も人々々です、若干時期を外して7月初めか
9月初めを季節の良い時期として考えました。
そんなにたくさんの方を募集するわけにはいきませんので、ほんの車一台に
入れる人数だけということで考えました。
後はお天気に恵まれることだけです。
私もここのところ泳いだ事などありませんが、昔毎日の如く海に泳ぎに行っ
た事も思いだし、一応は昔の海パン持って行く事にしました。
9月の浜はおもったよりも寂しいものでした。
今はもう秋、誰もいない海・・・、そんな感じのする海でした。
水着に着替えると言うより、上のものを取るともう水着でした、私は男性で
すから女性が着替えをするのを見るのは差し控えるのが普通ですが、何か感
覚が違うのです。
「あぁ、いいですよ。その辺で・・・私、見てませんから・・・」
「見てもしょうがないか?」
「まあ、そんなもんでしょうか・・」
夏の残骸のあるシャワ−室の壊れかかった簾の傍で、その着替はされたので
す。気軽といえばそうなんでしょうが、思いやりと言えば、荒れ狂う海の大
波をポケッと眺めていただけなのです。
少し風が強いな・・・・。
ズ〜と向こうの方に5人くらいの男女のグル−プが何か戯れている。
今は秋じゃなかったし、誰もいない海じゃなかったわけです。
風が強いのは困りものです。写真の出来映えにもスゴク影響してきます。
準備の出来た被写体を狙って、私はシャッタ−を押しはじめました。
自然の風景を背景にしての画像の切り落としは出きるだけアップにするのが
コツです。背景を入れようとするあまりに、大抵の場合、人物か小さくなる
のが通例です。これが卒業できればカメラの腕も合格点をあげても良いくら
いです。
私はもう、写真を撮るので精一杯でした。
ハタ、人声の気配を感じたので辺りを見渡すと、なんとズ〜と向こうの方で
話していた人達が直ぐ近くまできているではありませんか。
私達の撮影会をそれとなく見に来たのでしょうか?
波打ち際を伝ってきたようです。
平静を装って、カメラを撮り続けました。耳はロバの耳のように彼らの声を
キャッチし続けています。声はハッキリ聞こえはじめました。
次第次第に近づいて来ても、あまり変化はみられません。なんら変化もなく
楽しそうに戯れているようでした。
女装の人達と移動している時は特に神経を使うのが、見学に来る輩がいるか
らです。予想に反して楽しい雰囲気・・・。
「それじゃ、もっと水打際に近づいてみましょうか」
「他の人たちもいなくなったし・・・」
「いきますか?」
「でも、ちょっと波が荒いから水に近づくのは危険でしょうか?」
「そうかもしれませんね」
「女装の水死体なんか、話しになりませんですからネ」
「今日だけじゃなく、この次ぎだって出来ますからね。気軽に行きましょ
う」
「じゃこの近辺でめ一杯、写真とりましょうか」
写真を撮りはじめて、よくよく考えてみると海の波打ち際はあまり撮る所が
ない。ショットの単調さが災いしているのでしょうか、直ぐに飽きてきまし
た。
「やはり、さっきの所の方が良かったようです」
「そうですね。戻りますか」
「それにしても波だけ見ると、大嵐ですね」
「写真撮影にはいいのですが、水泳はとてもできません」
天空には早い勢いの雲が飛んでいきます。写真だと一応はストップモ−ショ
ンでいいのですけれど、海水浴につき物の入道雲っていうわけにはいきませ
ん。海水浴に必要な小物なども、この次ぎには準備しなければと思いました。
自分の思っている構想と実際とのギャップはいろいろありますが、こんな時
が一番困るのです。
「カツラが飛びそうです」
見た目にも痛々しく見えました。もうこれが限界かもしれません。
「それじゃ、帰りますか?」
「そうしましょうか」
「ところで話がかわりますが、下どうしてるんですか?」
「えェ、下・・・?」
「いいにくいのですが・・・」
「あぁ、ここ・・・」
「そうですが・・・」
「最初はショ−ツをはいて、その上にガ−ドルをはく、出来るだけキツメの
をはくと良いみたいです。私の場合は2枚はいていますけど、その人によっ
てちがいますからはっきり何枚とはいえませんが・・・」
「ああ、そうですか。そういえば昔レオタ−ドをはく時に、水着用のパット
の片一方を切って、そのパットにした話がありました。そんなのを利用すれ
ば良いかもしれませんね。その時だってわかりませんでしたよ」
「そうですか」
「男性の場合、無駄毛の処理なんかありますが、それはどうしているんです
か?」
「私の場合はそんなにありませんので、別にしませんでしたので問題はあり
ませんでした」
「そんなのだと、いいですね。ある人はどうすれば良いでしょうか?」
「しょうがないです、もう剃るしか方法ありません」
「胸の谷間から胸毛が出たりして・・・」
「そんな事だってあり得ます」
「うしろから見たら可愛い娘が、前からみたら水着の胸元から胸毛がなんて
話しにもなんないでしですよネ」
「外人のオバさんに口髭を蓄えている人がいますが、そのパタ−ンでしょう
か?」
あまりキレイな話しではなくなりました。本当にカツラが飛びそうなくらい
の強風になってきました。急ぎ着替えて車の方まで一目散に飛んでいきます。
砂地の足の感触がなんとも捨てがたい。海よ、さようなら〜。
私はその時だけのサンダルを砂地から地道に変わるところで普通の靴にハキ
替えました。
すっかりお腹も空いてしまいました。
せっかく日本海に来たんだから、何か美味しい魚料理が食べたいですよネ。
[例その74]
冬の寒い時期は女装にとっては絶好の季節です。特にお薦めは和服です。
和服は女装と同じくらい魅力的な衣装です。一度この道に入ると抜けられな
くなるほどいいみたいです。
「一度、和服で初詣行ってみたいのですが・・・」
「そりゃいいですけれど、初詣は大変な人ごみですし駐車場も大変です」
「それでもなんとか」
「神社の一番近くで、車を停めて待っていますので、それでチャチャといっ
て帰ってくる。そんなんだったら出来ますけれど・・・」
「それでもいいです」
「最短距離で車に待避できることはできますが・・・」
人も沢山出てきます。女性もこことぞばかりに着飾って出てくるのですから
並大抵のことではありません。
できれば近くの神社でとは思いましたが、大きい神社の方が余計にご利益が
ありそうで、結論としてはその神社にしました。
1月の最初のパレットハウスの営業日、ついに初詣に出かけました。
正月気分の真っ只中。キレイに着飾った本物の娘達が、慣れぬ足取りで歩い
ています。
大阪でも有名な住吉大社はもう人々々です。その正面に車を据えました。
「ここからは少し遠いんです」
「そうですか?どの辺りがいいのでしょうか?」
「裏の横辺りが一番近いのですが・・・」
「そうですか、じゃぁその辺りにしましょう」
車をそこと思われる所に停めました。私はその車中にとどまりました。こち
らも着飾った人達がいよいよ出ます」
「それじゃ、行ってきます」
なんとなく、武者震いがする感じがします。
「行ってらっしゃい。ここにいますから安心していてください」
「わかりました」
車のドァ−は閉められました。
残る私は今来るはずのないバックミラ−の角度を変え、深く車の椅子に沈み
込みました。
暫く経ちました。
ず〜と見ていたつもりがつい緊張のあまり軽い眠りを誘ったようでした。
ドァ−の外からトントンとたたく音が聞こえました。私はサモ知っていたよ
うにドァ−を開けました。
密閉されていた空気が一気に出て行ってしまいました。
「どうでした?」
「いや〜、大変だった。みんなバレていた」
「そうですか・・・」
「それでも、本殿の方に行ってきました」
「どんな具合でした?」
「スゴク混んでいたのでサッサと行って帰ってきました」
「なんかありました?」
「いや〜、人目がさすのでもう一目散っていう感じでした」
「大変でしたね」
「それでも、いい経験になりました。ありがとうございました」
「そうですね。そりゃ、そんなに体験できる人はいませんからね」
外から見れば、華やかなに着飾った妙齢な女性ばかりに、一人のおっちゃん
が一人。見ればうらやましくなる景色ではございませんか?でもね・・・。
「私、お神酒もらって来た・・・」
「そうですか、並んだとちがいますか?」
「少しですが・・・」
「それじゃ、準備できましたら出発します。いいですか?」
「はぁい」
車はその角を左に曲がって更に左に曲がって、本通にでました。
「何をお願いしたんですか?神様もビックリしたでしょうネ」
「私は、早く彼女が見つかるように・・・。と」
「私は健康で過ごせるように・・・」
「へぇ〜、そりゃ凄いネ。女の娘に彼女かぁ〜」
外に出るときと違って、なにやと少し華やいだ感じになりました。もっとも
女性でも振袖で出るときはそんな感じはしますが・・・。
「家内安全とかありませんでしたか?。奥さんいる方・・・」
「いや〜、しませんでした」
「そうですよネ、かあちゃん、安全じゃ話しにならないか?!」
「それ、違いますよ。家の中が安全であるようにということで、かあちゃん
が安全というわけじゃありません」
「もっとも、かあちゃんにバレないように、安全にって、口封じなんとちゃ
うのかな?」
「そんなの、神様聞き入れてくれないとちがいますか?」
「私も、そう思います」
「まあ、冗談もこの程度にして、ご感想はどうでしたか?」
「感想ですか、いや〜人が凄かった」
「それだけですか?」
「みんなに見られていた」
「そりゃ、晴れ着って見られるものですよ」
「他は何にもみてこなかったネ。本当に大変でした、行って帰って来たと言
う方が正解かな?」
大体は混んでいるところではこんなものなのです。又極端に混んでいるとこ
ろでは、あまり目立ちませんが、このような女性の美しさを競うような場所
ではいつも女装は目立ちます。
それでも後はご自分の勇気さえあれば不可能なことでもありません。私はこ
のような場所での女装も積極的にお薦めいたします。
話しのついでですからバレるバレないと言う話しを一つ
[例その75]
だいぶ昔の話しですが・・・その人は女装をすると必ず
「私、男ってわかる?」
っと聞き返すのが恒例でした。他の人もいつも
「うん、わからんって・・・」
といつも畳み返していました。
あまりしつこいので
「そりぁ、絶対とはいいませんが・・・、わかる時もある」
と答えたのです。彼女の苦労がここから始まったのです。
「何かバレない女装はないものか?」
「そんなのあったら、先に考えているわァ〜」
「いいこと思いついた・・・!」
その次の週、彼はいつもと同じようにやってきました。
「いいのも買ってきたんだぁ〜」
両手に少し余るくらいの包みを取り出している手元に、皆の目が注目してい
ます。そんなものあれば皆がそれを使ってみたい。
破られるその中のブツはなんだろうか?
その中からは間違いなくメガネケ−スらしき物。
「これこれ、メガネ・・・」
いやな予感がしました。もしかして・・・。
「これ、やったらわからん」
出てきたそのメガネは、真っ赤な縁の女物のメガネでした。
一瞬、その空間を天使が通っていきました。
私も目を疑いました。
彼はもうそれを魔法の杖のように、得意げに持っています。
よく女優や俳優がハデなサングラスや帽子をしているのを見ますが、あれは
カモフラ−ジュとかそんなものではなく、自分をより目立たせるための小道
具にほかありません。
言葉を出さずに
「私はココ・・、私はココ〜。皆、見て・・・」
と主張しているのです。
よくよく見るとサングラス・・・。
凄い〜、赤いメガネをつけた月光仮面。ああこれは〜。
「こんなんやけど・・・」
彼はまだ化粧をする前にかけてみせてくれました。
「そりゃ、だめだよ!余計にわかってしまうよ」
「そうだ。その通りだと思う」
他の人も、その感覚のギャップの違いさに驚嘆しています。
「そうかな〜。いいと思うんだけれど」
「一回これで、外に出てみたい・・・・?!」
「それはよした方がいいよ・・・絶対に・・・」
絶対にとつけた語気が強くなってしまいました。
「なぜ?・・・?」
「そりゃ、目立つし。バレるよ」
当然ながら、外出を押し止めようとしています。
人の感覚がこんなにいい加減に出来ていることに、人間の不思議ささえも感
じてきました。
バレないためが、逆に目だってしまう。これが本人にはわかっていないので
す。
「そうやね・・・」
私は皆に同意を求めました。一人ではどうみても私だけの感覚で押し止めて
いるような雰囲気だったからです。
「ホントやで・・・そのままでたらおかしい」
やっと助け舟が出てきました。
赤縁の月光仮面はなんとかそれで、意志を翻してくれたようでした。
そのままマントを畳んで直してくれて、皆もホッとしました。勿論、私も。
「ねぇ、私。男に見えない?」
繰り返し繰り返し言う言葉に飽き飽きしていても
「そう、見えないって!」
鸚鵡返しに、答える毎日がまたやってきました。あぁ、これでいいんだネ。
毎週の如く来ていた彼はある日を境に突然に、彼は姿を消してしまいました。
それからしばらくして、彼が病気で入院しているらしいという情報が入って
来ました。それ以来彼の顔は見たことがありません。
愛すべき、同じ言葉を要求する彼の気持ちと彼の身は今どこにあるのでしょ
うか?
「そう、見えないって!」と半分怒りながら答えた彼に今一度、いや何度で
も「そう、見えないよ」と本気で答えてあげたいのです。
大阪では街中で普通の格好(男性)を見る事があります。今回の話はその例
です。
[例その76]
私は電車に乗ってもほとんど、回りを見渡すことがありません。いつもテ−
プを聞いていて、方や本ばかりを読んで時間を有効に利用しているのです。
今日も今日とて、いつもと同じように電車に飛び乗ると本を片手にテ−プを
動かして聞いていました。
最初は全然気がつかなかったのですが、なんとなく漏れ聞こえる声は聞き慣
れた声じゃありませんか・・・。
本の外から目をそらす恐さを感じながらも、その声も確信に近いものになっ
てきました。
こんな時はどうしたらいいのでしょうか?
こちらからは挨拶もしなければ、目礼さえもいたしません。
間違いもなくそれはその声の持ち主でした。
私はそのテ−プを聞きながら、本を持つ手も微動だにもせず事態を静観いた
しました。
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